要旨は「話題」ではなく「筆者の判断」
何について書かれているかと、筆者が何を言いたいかは別です。「在宅勤務について」という話題だけをつかんでも、全面導入を勧めているのか、条件付きで試すべきだと言っているのかは決まりません。結論に付いた条件や留保まで含めて要旨にします。
設問が要旨、本文との一致、理由、言い換えのどれを求めているかを先に確認します。要旨なら全体の主張、一致問題なら根拠となる一文を探す、と照合する単位を変えます。速読だけを目標にすると、この切り替えが抜けがちです。
独自例題:条件付きの提案を読み取る
ある企業は、在宅勤務を全社へ拡大するか検討している。試行部門では定型的な申請処理の件数が増えたが、新任者の相談待ち時間は長くなった。処理件数の増加には、同じ時期に進めた申請書式の統一も影響した可能性がある。経営会議は、試行結果だけから在宅勤務そのものの効果を断定するのは早いとした。一方、相談時間帯を定めたチームでは待ち時間が短縮したため、制度を全面的に取りやめる根拠も十分ではない。今後は、業務特性と育成上の課題を分け、相談体制を整えたうえで対象を段階的に広げ、その結果を確かめるべきである。
本文の要旨として最も適切なものはどれでしょうか。
- A:在宅勤務が処理件数を増やしたので、直ちに全社へ拡大すべきだ
- B:新任者の相談に問題があるため、在宅勤務を全面廃止すべきだ
- C:効果を断定せず、業務と育成の課題に対応しながら段階的に検証すべきだ
- D:申請書式を統一すれば、どの部門でも在宅勤務の課題は解消する
解説:結論の強さを変えない
- ① 観測されたこと処理件数は増加。一方で、新任者の相談待ちは長くなった。
- ② 断定を留保する理由同時期の書式統一も影響した可能性。在宅勤務だけの効果とは限らない。
- ③ 条件付きの提案業務と育成の課題を分け、相談体制を整えて段階的に検証する。
要旨は③だけでなく②の留保も残す。「直ちに全面導入」「全面廃止」へ強めない。
正解はCです。効果の断定を避ける留保と、条件を整えて段階的に広げる提案の両方を保っています。Aは「可能性」を原因の確定に変え、段階的な導入を即時拡大に変えています。Bは一部の問題から全面廃止へ飛躍しています。Dは本文にない十分条件を付け足しています。
本文にある言葉を多く使う選択肢が正解とは限りません。同じ名詞でも、因果の向き、対象範囲、時点、断定の程度が変われば別の主張になります。正しい肢の根拠だけでなく、誤った肢のどの語が強すぎるかを示すと復習が具体的になります。
限定語を一つずつ照合する
「一方だけ」と「少なくとも一方」は、集合の四領域に対応させると違いが見えます。「AならB」の向きを取り違える場合は必要条件と対偶の例題で反例を作りましょう。
『各支店に一人以上』のように対象が入れ子になる文は、全員・少なくとも一人の否定で支店と社員の範囲を分けて確認できます。
| 本文 | 誤った言い換え | 変わったもの |
|---|---|---|
| 一部の部門 | 全部門 | 対象範囲 |
| 改善する可能性 | 必ず改善する | 確実性 |
| 導入の条件 | 導入すれば十分 | 条件の向き |
| 現時点では不明 | 将来も不可能 | 時間の範囲 |
表を1行ずつ読む
- 本文
- 一部の部門
- 誤った言い換え
- 全部門
- 変わったもの
- 対象範囲
- 本文
- 改善する可能性
- 誤った言い換え
- 必ず改善する
- 変わったもの
- 確実性
- 本文
- 導入の条件
- 誤った言い換え
- 導入すれば十分
- 変わったもの
- 条件の向き
- 本文
- 現時点では不明
- 誤った言い換え
- 将来も不可能
- 変わったもの
- 時間の範囲
選択肢の判断には常識を足しすぎないでください。一般論として正しくても、本文から支えられない内容は本文一致の答えにはなりません。ただし仮説の検証を問う設問では追加情報の役割を考えるため、まず設問の要求を区別します。
次の練習は、文章を短くするより構造を残す
結論を一文、その条件を一文で書いてから原文へ戻り、削りすぎを点検します。理由のつながりを図にする方法は論理構造把握、追加情報で主張を評価する方法は論証1で扱います。練習の順番は2週間の学習計画にまとめています。
公式情報とこの記事の位置づけ
試験の構成はグロービス公式の受験科目、運用上の確認事項は公式FAQを参照しています(確認日:2026年9月9日)。受験条件は勤務先からの案内を優先してください。
以下の例題・数値・学習手順は当サイトのオリジナルです。公式問題・過去問の転載や再現ではなく、実際の出題・難易度・合格を保証しません。当サイトはグロービスの公式サービスではありません。
よくある質問
文章は最初から全部読むべきですか?
設問の要求を確認したうえで、主張と条件をつかみます。要旨問題では全体、一致問題では根拠箇所へ戻る読み方を使い分け、読む順番を一律に決めないことが大切です。
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