平均は総量を均した値、中央値は並べた中央の値
ここでの平均は算術平均で、各値の合計を件数で割ります。中央値は小さい順に並べた中央の値です。奇数件なら中央の一つ、偶数件なら中央二つの値の平均を使います。『平均』という言葉が何を指すかは資料の定義を確認してください。
平均と中央値が離れるとき、どちらかが計算ミスとは限りません。長い時間が少数含まれる場合など、分布の形によって両者は違います。目的が総作業量の確認なのか、中央付近の案件の把握なのかを先に決めます。
中央値も、全案件がその時間以内という上限や、特定の案件が終わる時間を保証する値ではありません。代表値だけで全体を語らず、件数、最小・最大、個々の値やばらつきと一緒に読みます。
独自例題:平均20分という報告をどう読むか
同じ集計ルールで完了した7件の処理時間が下表に示されている。どの値も入力誤りではなく、7件の実測値をそのまま集計する。各案件は等しい1件として扱う。この7件について確実に言えるものを選べ。
| 案件 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 処理時間(分) | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 77 |
表を1行ずつ読む
- 案件
- 処理時間(分)
- A
- 8
- B
- 9
- C
- 10
- D
- 11
- E
- 12
- F
- 13
- G
- 77
- A:平均は20分で、中央値は11分である
- B:平均が20分なので、少なくとも4件は20分以上である
- C:中央値は4番目の位置を表すので、4分である
- D:77分だけが離れているため、自動的に除いて平均を報告する
解説:長い1件は総量を増やすが、中央の位置は動かさない
正解はAです。合計は8+9+10+11+12+13+77=140分、平均は140÷7=20分。小さい順の4番目は11分なので、中央値は11分です。中央値の『4番目』は位置であって、4分という値ではありません。
架空の完了案件7件。横軸は処理時間(分)、棒は各1件の時間で、件数の度数ではありません。0〜80分の同じ目盛、軸省略なし。
- 長い破線:平均20分
- 短い点線:中央値11分
合計140分 ÷ 7件=平均20分
小さい順の4番目=中央値11分
表示の右端の数字は各案件の分数。77分も有効な記録として集計します。全7件の合計と中央値×件数は一致しません。
Bは平均を人数の境界と混同しています。この例では20分以上はGの1件だけです。Cは位置と値を入れ替えています。Dは有効な長時間案件を根拠なく除外しており、7件全体の実績を別の集団へ変えてしまいます。
Gの77分は他の6件から離れた値ですが、この設問は入力誤りではないとしています。長かった理由を調べることと、見栄えのよい平均にするため除くことは違います。資料に除外基準があるなら、その基準と集計目的を確認します。
1件の値を変えたとき、どの指標が動くか
Gだけが77分から84分へ変わり、他の6件が同じなら、合計は147分、平均は21分へ上がります。並び順の中央Dは11分のままなので中央値は変わりません。これはこの変更で中央の位置が変わらないためで、中央値があらゆるデータ変更に反応しないという意味ではありません。
| 比較する集団 | 合計 | 平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 元の7件 | 140分 | 20分 | 11分 |
| Gだけ84分に変更した7件 | 147分 | 21分 | 11分 |
| Gを除いた別の6件 | 63分 | 10.5分 | 10.5分 |
表を1行ずつ読む
- 比較する集団
- 元の7件
- 合計
- 140分
- 平均
- 20分
- 中央値
- 11分
- 比較する集団
- Gだけ84分に変更した7件
- 合計
- 147分
- 平均
- 21分
- 中央値
- 11分
- 比較する集団
- Gを除いた別の6件
- 合計
- 63分
- 平均
- 10.5分
- 中央値
- 10.5分
Gを除いた6件の中央値は3番目10分と4番目11分の平均で10.5分です。『偶数なら低い方』『7件目を消しても中央は常に同じ』とはしません。除外後の平均10.5分は、元の7件の平均20分の訂正値ではなく、対象が変わった別の値です。
応用:8件目が欠測なら、0分で補わない
平均の分母が件数でなく時間になる例は総距離÷総時間と停止の扱いで確認できます。並んだ率を単純平均する前に、求める指標を定義しましょう。
別の集計として、上の7件に加えて8件目Hも完了しているが、時間の記録だけが欠けていたとします。他の記録からHの時間xは0分以上80分以下と分かっているものとします。これは欠測値が実際に0分だったという意味ではありません。
8件の平均は(140+x)÷8。xの範囲から17.5分以上27.5分以下と分かりますが、一つの値には決まりません。既知7件だけの平均20分を出すなら、7件の平均であることと1件欠測を明記し、8件全体の確定平均とは書きません。
中央値も一つには決まりません。Hが10分以下なら中央二つは10・11分で10.5分。Hが10〜12分なら中央二つの合計は11+xとなり、中央値は(11+x)÷2。Hが12分以上なら11・12分で11.5分です。したがって8件の中央値は10.5〜11.5分の範囲です。
空欄を0にすると、平均を範囲の最小値17.5分へ勝手に固定します。欠測の理由によっては長い案件ほど記録が残らない等の偏りも考えられますが、それは追加確認すべき仮説であって、この表から確定した事実ではありません。
合計を知りたいのか、中央付近を知りたいのかを分ける
7件の総処理時間は平均20分×7件=140分と戻せます。中央値11分×7件=77分では合計を再現できません。一方、中央付近の案件の長さを一言で示すなら、このデータでは中央値11分も有用です。必要な情報に応じ、複数の指標を併記します。
処理時間が重なっていたり複数人が同時に作業していたりするなら、140分はそのままカレンダー上の経過時間や人件費計算の労働時間とは限りません。時間の定義と同時進行の有無を確認する必要があります。
また、任意に集めた7件だけから、今後の全利用者の平均や待ち時間を保証することはできません。代表値の計算が正しいことと、調べた対象が全体を代表していることは別です。図を見て長い案件の原因まで断定することも避けます。
分母が違う群をまとめる場合は加重平均、元の比率を条件付きの比率へ読み替える誤りは条件付き確率、図表から仮説を考える場合は論証2へ進んでください。
復習チェックと参照資料
- 件数と合計を確認し、平均を求める
- 値を小さい順に並べ、中央の位置と実際の値を分ける
- 極端な値を動かした例で、平均と中央値を比較する
- 欠測・除外・対象変更がある場合は、集計対象と未確定の範囲を書く
定義の確認に、OpenStax:Introductory Statistics 2e 2.5を参照しました(2026年9月9日確認)。処理時間、変更後の例、欠測の範囲、図、問題は当サイトの独自作成です。参照教材の図やデータは使用していません。
公式情報と独自教材の位置づけ
グロービスの受験科目案内では、CTのデータ理解は図表から言えることを理解する力を測定すると説明されています(2026年9月9日確認)。本記事のテーマ分けは、その練習用に当サイトが選んだもので、公式の詳細出題範囲や頻度を示すものではありません。
問題・数値・図解は公式問題・過去問の転載や再現ではなく、当サイトのオリジナルです。本番と同じ難易度・採点・得点上昇・合格を保証しません。当サイトはグロービスの公式サービスではありません。
よくある質問
平均と中央値は、どちらが正しいですか?
どちらも定義に沿っていれば正しい集計です。平均は合計を件数で割った値、中央値は並べた中央の値で、表すものが違います。目的と分布に応じて併記します。
偶数件の中央値はどう求めますか?
小さい順に並べ、中央二つの値の平均を求めます。記事の6件8・9・10・11・12・13分なら、(10+11)÷2=10.5分です。
欠測値は0として平均すればよいですか?
根拠なく0へ置き換えません。既知の件数だけの平均と、欠測を含む全体の平均を区別します。値の範囲だけが分かる場合は、全体平均も範囲として示せます。
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