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全部原価計算と直接原価計算の違い|在庫が利益を変える例題

売上が同じなのに、計算方法で利益が変わるのはなぜでしょう。固定製造間接費が在庫に残る仕組みを、二期間の独自ケースで追いかけます。

判断基準 → 実行手順 → 次の一手最終更新 2026/09/24
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この単純化した例では、全部原価計算は固定製造間接費の一部を在庫に含め、直接原価計算は当期の費用にします。現金が増えたわけではなく、費用を認識する時期が違います。

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二つの分類軸を、最初に分ける

直接費・間接費と、変動費・固定費は別の分類です。直接費は特定の製品へ直接対応づけられるかという軸、変動費は活動量に応じて変わるかという軸です。「直接原価計算」という名称から、直接費だけを計算する方法だと理解すると混乱します。ここでは変動製造原価を製品へ集計し、固定製造間接費を期間費用とする方法を扱います。

全部原価計算との違いを学ぶには、固定製造間接費が売上原価へ移る時点を追います。財務報告の細かな配賦差異や税務判断を扱う記事ではなく、管理会計の基礎を独自ケースで確認する補助学習です。

独自例題1:1,000個作り、800個売る

期首在庫は0個。当期に1,000個を生産し、800個を一個1,000円で販売しました。単位変動製造原価は400円、固定製造間接費は当期20万円、固定販売管理費は10万円です。他の費用・税金・仕掛品・原価差異はありません。固定製造間接費は当期生産1,000個へ均等配賦するとします。

全部原価計算では固定製造間接費が一個200円加わり、製品単価は600円です。売上80万円に対し、売上原価は800×600=48万円。販売管理費10万円を引いた利益は22万円となります。残る200個の在庫は200×600=12万円です。

直接原価計算では利益18万円となる

固定製造間接費20万円の居場所が違う
固定製造間接費20万円のうち、全部原価計算では16万円が当期売上原価、4万円が在庫。直接原価計算では20万円全額が当期費用。

数値・条件は学習用の独自例です。公式問題の再現ではありません。

変動製造原価の売上対応分は800×400=32万円。売上80万円から引くと48万円が残り、固定製造間接費20万円と固定販売管理費10万円を引いて18万円です。在庫200個に含まれるのは変動製造原価だけなので8万円になります。

項目全部原価計算直接原価計算
売上80万円80万円
販売した800個の製造原価48万円32万円
別途引く固定製造間接費0万円20万円
販売管理費10万円10万円
利益22万円18万円
期末在庫12万円8万円

利益差4万円は、期末在庫200個に残った固定製造間接費200円×200個です。全部原価計算で固定費が消えたのではなく、売れ残りに含まれて翌期へ持ち越されています。

独自例題2:次の期に在庫200個をすべて売る

理解を確かめるため、次期は生産を行わず、前期末の200個だけを同じ単価1,000円で売るとします。次期の製造固定費・販売管理費など追加の費用は0円とする、仕組みを追うための簡略例です。

次期の売上は20万円。全部原価計算では前期からの在庫原価12万円が費用になり、利益8万円。直接原価計算では在庫原価8万円が費用になり、利益12万円です。前期の差4万円が、次期には逆方向へ現れます。二期間合計はどちらも30万円で一致します。

「在庫を増やせば好業績」と考えない

この例では全部原価計算の当期利益が高くなりましたが、需要がない製品を作っても現金回収は増えません。保管費、陳腐化、廃棄、資金負担なども生じ得ます。単年度の利益だけで生産量を評価すると、販売につながらない在庫増加を見落とすことがあります。

実際の判断では在庫評価、操業度差異、通常の生産能力、固定費の配賦方法なども関わります。「在庫増加個数×固定費単価」という単純式を、単価が期ごとに変わるケースや評価損があるケースへ無条件に広げないでください。この記事では、前提を絞ることで費用の時期の違いを見ています。

損益分岐点へつなぐときの注意

限界利益を使った損益分岐点の式は、売上数量と費用の関係を一定の前提で整理します。在庫が増減する全部原価計算の利益を、在庫の調整なしに同じ式へ当てはめると食い違う場合があります。何の利益を求めるかと、生産・販売の数量が同じかを確認します。

生産も販売も1,000個なら、期末在庫はゼロです。この例の利益は、売上100万円−変動製造原価40万円−固定製造間接費20万円−販売管理費10万円=30万円で両方法とも一致します。差を生む条件を取り除いた検算になっています。

よくある誤りを、原価の居場所で直す

誤り確認する場所
固定販売管理費も在庫へ入れる今回の在庫に含めるのは製造原価。販売管理費は別
固定製造間接費を売上原価と全額費用の両方で引く全部原価計算では配賦済みの金額を二重に引かない
在庫増で現金も増えると判断する利益の認識と現金の入出金を分ける
直接原価計算なら固定費を無視する固定費は当期の費用として引いている

「どちらの利益が正しいか」を数字だけで争うのではなく、目的と計算上の前提を説明します。同じ経済活動でも、製品原価の範囲が違えば期間利益の見え方が変わる、という点を理解することが大切です。

確認問題:900個売れた場合

例題1の販売数量だけを900個へ変え、他の条件は同じとします。全部原価計算と直接原価計算の利益、差額を求めてください。期末在庫は100個です。

全部原価計算は90−54−10=26万円。直接原価計算は90−36−20−10=24万円。差は2万円で、100個×200円に一致します。販売が増えると利益は増えますが、在庫へ繰り延べられる固定費は減っています。二つの変化を一緒に説明できれば理解が進んでいます。

応用:期首と期末で配賦単価が違う場合

期首在庫に含まれる固定製造間接費が3万円、期末在庫に含まれる固定製造間接費が5万円とします。他の調整がなく、同じ活動を二方法で比べるなら、全部原価計算の利益は直接原価計算より2万円高くなります。期首から当期費用へ出た3万円と、期末へ残る5万円の差です。

ここで期首在庫が100個・一個300円、期末在庫が250個・一個200円だった場合、在庫増150個×当期200円=3万円では一致しません。期首と期末の単価が違うためです。個数だけではなく、それぞれの在庫に含まれる固定費の金額を追う必要があります。

売上総利益と限界利益も、名前を分ける

全部原価計算で売上から売上原価を引いた売上総利益と、変動費を引いた限界利益は別です。今回の例題1では前者は32万円、直接原価計算での変動製造原価控除後は48万円です。売上原価に含まれる固定費の有無が違います。

実際に変動販売費がある場合、限界利益を求めるにはその変動費も控除します。この例では変動販売費がないため、売上から変動製造原価を引いた数値をそのまま使えています。省いた費用の条件を忘れて、すべてのケースへ同じ計算を広げないようにしましょう。

次に確認すること

固定費・変動費の推定は高低点法、計画と実際の差は標準原価差異で練習できます。科目の入口はGMAP-BFの勉強方法、サービス全体はGMAP対策 Web問題集へ。

概念の確認資料:OpenStax:変動原価計算と全部原価計算(2026年9月24日確認)。以下の数値・設問・図は当編集部の独自作成です。

次の学習と確認資料

損益分岐点の基本利益と現金条件変更と利益

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