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カニバリゼーションの利益計算|新商品が既存商品を置き換えるケース

新商品が売れても、会社全体の利益が増えるとは限りません。旧商品の失われる限界利益と追加固定費を引き、共食いと純増を図解で分けます。

判断基準 → 実行手順 → 次の一手最終更新 2026/10/11
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新商品の売上だけでは、会社全体への効果は分からない

カニバリゼーションは、新商品や新チャネルの利用が、自社の既存商品の需要を置き換えることです。売上が新商品へ移っただけの部分と、会社全体に増えた部分を分ける必要があります。新商品の販売数量すべてを新規需要と扱うと、追加利益を過大に見積もる可能性があります。

既存の製品開発・イノベーションは開発の目的や条件を扱います。本記事は代替される旧商品と追加費用を計算するケースに絞ります。カニバリゼーションがあることだけで発売中止を決めるわけでもありません。置換しても利益が増える場合や、競合への流出を防ぐ意味がある場合があります。

独自ケース:新商品80個のうち30個が旧商品から移る

旧商品の単位限界利益は500円、新商品は700円。新商品を80個販売する計画で、このうち30個は、発売しなければ旧商品を買った顧客の乗り換えとします。追加固定費は月30,000円。両商品の変動費は各限界利益に織り込み済みで、税金・在庫・能力制約は考えません。

新商品の利益から、失う旧商品分と追加費用を引く
  • 新商品80個 × 700円 → +56,000円新商品の限界利益
  • 旧商品の乗り換え30個 × 500円 → −15,000円発売しなければ得られた旧商品の限界利益
  • 追加固定費 → −30,000円発売によって増える費用だけを引く
  • 会社全体の追加利益 → +11,000円56,000−15,000−30,000で比較する

販売予測ではなく独自の仮定。乗り換え30個、純増50個、能力制約なしの計算です。

新商品の限界利益は80×700=56,000円ですが、旧商品から30×500=15,000円の限界利益を失います。会社全体の追加利益は56,000−15,000−30,000=11,000円です。乗り換えの30個を売上ゼロと扱うのでもなく、旧商品分を丸ごと無視するのでもなく、差を比べます。

乗り換えと純増を別々に計算して検算する

乗り換え30個は、一個当たり700−500=200円の利益改善で合計6,000円。残る50個はこの仮定では会社全体の新規需要なので、50×700=35,000円です。二つを足した41,000円から追加固定費30,000円を引くと11,000円。別の経路でも同じ値に戻ることを確認できます。

需要の区分数量会社全体の限界利益の増分
旧商品からの乗り換え30個6,000円
純増50個35,000円
合計80個41,000円

ここでは、新商品を買わなければ旧商品を買ったという反実仮想を30個について仮定しています。実際のアンケートで「旧商品利用者だった」と答えただけでは、その30人全員が今回も旧商品を買う予定だったとは限りません。実測と仮定を区別して見積もります。

乗り換えが多いほど、追加利益はどう変わるか

新商品80個を固定し、旧商品からの乗り換え個数をcとすると、追加利益は56,000−500c−30,000=26,000−500cです。c=52なら利益差はゼロ、53なら−500円です。52個という境界は今回の限界利益・数量・追加固定費を固定した結果で、一般的な共食い率の合格ラインではありません。

乗り換えが80個でも、新商品一個当たりの改善は200円なので限界利益は16,000円増えます。しかし追加固定費30,000円を埋められず、最終的な差は−14,000円です。「単位利益が高いから発売すれば必ず儲かる」という主張の不足が、数式から分かります。

既存固定費と、発売で変わる固定費を区別する

発売してもしなくても同じ家賃を、新商品へ社内配賦しただけなら、会社全体の差額として再度引く必要はありません。反対に、新商品に必要な追加広告や専任担当の費用が増えるなら、変わる費用として含めます。限界利益の計算に既に入れた費用を固定費として二重に引かないことも確認します。

旧商品の販売減少で製造能力が空くなら、その能力を別用途へ使えるかで結果が変わる場合があります。機会費用・埋没費用、制約資源の配分へつなげます。数字だけでなく、比較の前提を説明できることが意思決定の学習になります。

復習では、発売しない場合の世界を必ず書く

新商品の計画だけを書くのではなく、「発売しないと旧商品が何個売れるか」を横に置きます。乗り換え30個が20個だった場合、限界利益が700円ではなく600円だった場合など、一つずつ条件を変えて差額を再計算してください。公式の記憶よりも、会社全体で何が増え何が減るかが重要です。

長期のブランド、価格体系、顧客の満足などは、この短期の単純ケースに含んでいません。追加利益が正だからすべての観点で最適と断定せず、まず指定された範囲の経済効果を正しく比較する練習にします。ここで使う販売数量は編集部の仮定であり、実際の販売予測ではありません。

移行率が未知なら、損益が変わる境界を報告する

新商品80個は売れるが、既存商品からの移行数cが未確定とします。利益増分は26,000−500c円なので、移行が52個なら0円、53個なら−500円です。移行率へ直すと52÷80=65%が境界です。「80個売れれば利益が増える」ではなく、「移行数が52個未満なら、この条件で利益が増える」と条件付きで説明できます。

ただし新商品の販売数量と移行数が独立に変わるとは限りません。販促を増やして80個を超える場合は、追加固定費や限界利益も変わる可能性があります。境界は、数量80・新限界利益700円・既存限界利益500円・追加費用30,000円を固定した場合にだけ成立します。

顧客区分ではなく、購入しなかった場合との差を数える

既存顧客が新商品を買っても、新商品がなければ今回は何も買わなかったなら、既存商品の限界利益500円を失ったことにはなりません。反対に新しい顧客でも、別の既存商品を買う予定を変更したなら移行として扱う場合があります。属性の新旧と、売上の純増・置き換えは同じ分類ではありません。

実務ではこの反実仮想を直接観測できないため、顧客調査や比較対象の販売推移を使い、推定の幅を示します。学習ケースでは問題文が移行数を定めます。与えられた条件と現実の推定問題を混ぜず、まず計算できる範囲を解き、その後に未確認の要素を分けて書くと判断が明瞭になります。

確認課題として、追加固定費だけを40,000円へ変えてください。移行30個なら利益増分は1,000円、損益ゼロの移行数は32個です。同じ販売80個でも、新商品の導入費が変わると許容できる置き換え数が変わります。変更した条件を式のどこへ反映したかを説明し、元の65%という境界を使い回さないようにします。

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