目次:読みたい項目を選ぶ
全体像・読み進め方を確認する
両側のコストに、それぞれの時価比率を掛ける
計算手順の一例。税効果を利用できる前提で、株主資本側にも構成比の重みを掛けます。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ進めます。
↓ 気になる項目から、本文の解説へ進めます
資本コストは現金の支払利息だけではない
資本コストは、資金の提供者がリスクに見合って要求する収益率です。負債には利息等の負担があり、株主資本には株主が別の投資機会を選べることに対応した機会費用があります。配当を出さないから株主資本コストがゼロ、ということではありません。
WACCは負債と株主資本のコストを重みづけした率です。EVAでは投下資本に掛けて金額に直し、ROICなどの実績指標とは役割を区別します。本記事の数値は独自の学習例で、現行市場の推奨利回りや投資助言ではありません。
WACCは税引後負債コストと株主資本コストの加重平均
WACC=rD×(1−T)×D/(D+E)+rE×E/(D+E)
| 記号 | この例での意味 | 注意 |
|---|---|---|
| D・E | 有利子負債・株主資本の時価 | 一般の買掛金を負債コストの重みに混ぜない |
| rD・rE | 税引前負債コスト・株主資本コスト | 過去の支払額だけで将来の要求利回りを決めない |
| T | この例で利息の税効果に用いる税率 | 税効果を利用できる前提を確認 |
ここでは利息が控除対象となり、節税効果を利用できると仮定します。実際には課税所得や制度上の制約などで単純な調整が適さないこともあります。株主資本側へ同じ(1−T)を掛けません。時価が直接得られない場合の推定と、設問で帳簿額を近似として指定される場合も区別してください。
D=400、E=600百万円、rD=4%、rE=10%、T=30%なら、税引後負債コスト2.8%。WACC=2.8%×40%+10%×60%=1.12%+6%=7.12%です。40%と60%は構成比、1.12%と6%は全体のWACCへの寄与です。
負債比率だけを変える計算と、リスクも変わる計算
D比率を40%から60%へ上げ、rD4%・rE10%を固定した仮定計算なら、2.8%×60%+10%×40%=5.68%へ下がります。しかし、これは金利と株主要求利回りが変わらないという前提の結果です。
同じ60%の負債比率でも、rDが7%、rEが16%へ上昇する条件なら、4.9%×60%+16%×40%=9.34%。元の7.12%より上がります。増えた負債の返済負担や損失への不安で要求利回りが変わることを、重みだけの計算では捉えられません。
- 基準負債40%・株主資本60%
rD 4%・rE 10%
1.12% + 6.00% = 7.12% - 重みだけ変更負債60%・株主資本40%
rD 4%・rE 10%を固定
1.68% + 4.00% = 5.68% - 要求利回りも上昇負債60%・株主資本40%
rD 7%・rE 16%
2.94% + 6.40% = 9.34%
WACCへの寄与:税引後負債コスト×負債比率 + 株主資本コスト×株主資本比率
全条件で税率30%、税効果を利用できる仮定。比率は時価ベース。3行は同じ会社の時系列実測ではなく、条件を分けた計算例です。最適な借入比率を表すグラフではありません。
この3条件は独自の比較で、現実の最適な借入比率や因果関係を推定したデータではありません。『無借金は常に最善』も『無借金は必ず非効率』も言えません。資金需要、税効果の利用可能性、財務困難の費用、調達の柔軟性を合わせて検討します。
CAPMのβは、実現した株価変動を保証しない
rE=無リスク利子率+β×市場リスクプレミアム
市場リスクプレミアム=市場の期待収益率−無リスク利子率
無リスク利子率2%、市場の期待収益率8%、β=1.2なら、rE=2%+1.2×(8%−2%)=9.2%。8%をリスクプレミアムとしてそのまま掛けると11.6%となり、与件と違います。
βは市場収益率との共変動に関する感応度で、CAPMでは市場リスクの負担と期待収益率を結びます。β=1は市場並みの感応度を示す目安であり、『市場が実際に10%上がれば、その株も必ず10%上がる』という予測ではありません。企業固有の情報や推定誤差もあります。
βが1未満でも、負のβや大きな企業固有リスクを含む場合があり、単に『あらゆるリスクが小さい』とは言えません。βの推定期間・頻度・市場指数が違えば値も変わります。CAPMは仮定を置くモデルであり、実現リターンの保証ではありません。
分散・MM理論・案件の割引率を混同しない
CAPMでは、十分に分散された投資家を考え、個別要因のリスクと市場に共通するリスクを区別します。分散で個別要因の影響を減らせても、価格変動や損失をなくすという意味ではありません。
MM理論の資本構成無関連命題は、税・取引費用・財務困難費用などを捨象した完全市場の仮定の下での結論です。法人税だけのモデルと、税効果・財務困難費用の両方を考えるモデルは別です。現実のすべての会社に同じ比率の最適解があるとは書けません。
会社全体のWACCを、新規事業へ無条件に当てはめることも避けます。対象のキャッシュフローが企業全体向けか株主向けか、税引前/後、通貨・名目/実質・事業リスクがそろっているか確認します。企業全体向けFCFには対応するWACC、株主向けFCFには株主資本コストを使うという区別が基本です。
現在価値・NPV・IRRとDCFによる企業価値評価で、率を適用するキャッシュフローと時点まで追ってください。
一次資料と確認問題
参照:CFA Institute:CAPMと市場リスク、CFA Institute:資本構成、Damodaran:CFと割引率の対応。2026年9月9日確認。数値・図・問題は当サイトの独自例です。
復習では、①税引後にする側、②重みに使う金額、③率を適用できるCF、④固定した条件を説明してください。記事末尾の問題には説明済みの例が含まれ、初見診断や習得保証ではありません。
このテーマを、図と独自ケースで深める
割引率と年金現価では、前提・具体例・判断できる範囲を順に確認できます。
用語の境界を比較し、ケースで確かめる
ファイナンスの用語を比較するでは、似た言葉の違いを短い定義と具体例で整理し、図解・独自ケース・条件変更の確認問題につなげています。
割引率とキャッシュフローの基準をそろえる例は、名目・実質金利と現在価値の照合で確認できます。物価調整した金額へ名目率をそのまま使わないことが重要です。
よくある質問
WACCに使う負債と自己資本は帳簿額ですか?
基本は有利子負債と株主資本の時価による構成比です。時価の推定や帳簿額を近似にする場合は前提を確認し、ROICなどの会計上の投下資本と区別します。
負債を増やせばWACCは必ず下がりますか?
いいえ。負債比率だけでなく、負債・株主資本双方の要求利回りや税効果も変わり得ます。本記事の比較では、要求利回りの上昇を伴う案のWACCは7.12%から9.34%へ上がります。
βが1なら株価は市場と同じだけ動きますか?
実際の変動が一致する保証はありません。βは市場との共変動に関する感応度で、CAPMでは期待収益率の推定に使います。企業固有の要因や推定期間なども確認します。
両側のコストに、それぞれの時価比率を掛ける
計算手順の一例。税効果を利用できる前提で、株主資本側にも構成比の重みを掛けます。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ戻れます。
↑ 気になった項目を押すと、本文の解説へ戻れます
この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
-
第1問/全3問 有利子負債の時価400百万円、株主資本の時価600百万円。税引前負債コスト4%、株主資本コスト10%、利息の税効果に用いる税率30%。節税効果を利用でき、他の調達手段はない。この条件のWACCはいくらか。
(C)が正解。4%×(1−0.30)×0.4+10%×0.6=1.12%+6%=7.12%です。(A)は全体7.6%へ一律0.7を掛け、株主資本側にも税調整しています。(B)は負債の税効果を反映していません。(D)は税調整をせず負債と株主資本の重みも逆にした値です。どの率に何を掛けるかを分けて確認します。
-
第2問/全3問 無リスク利子率2%、市場ポートフォリオの期待収益率8%、ある株式のβは1.2とする。CAPMで算出した株主資本コストの推定値と、その読み方として適切な組合せはどれか。
(A)が正解。市場リスクプレミアムは8%−2%=6%、2%+1.2×6%=9.2%です。(B)は市場収益率とプレミアムを混同しています。(C)は期待値を実現値の保証へ強めています。(D)の7.2%は上乗せ分だけで、無リスク利子率2%が抜けています。βは企業固有リスクや将来の株価をすべて説明する数値ではありません。
-
第3問/全3問 負債比率40%、負債コスト4%、株主資本コスト10%の案甲に対し、案乙は負債比率60%、負債コスト7%、株主資本コスト16%。税率はいずれも30%で利息の税効果を利用できる。各比率は時価ベース。これらの数値を用いた比較として正しいものはどれか。
(B)が正解。甲は2.8%×0.4+10%×0.6=7.12%。乙は4.9%×0.6+16%×0.4=9.34%です。(A)は要求利回りの変化を無視しています。(C)の5.68%は甲の4%・10%を乙にも使った場合です。(D)の2つの値はどちらも税効果の調整前です。ここでの比較から一般的な最適負債比率までは求まりません。
無料の6問で、問題と解説を試しましょう
6科目から1問ずつ。会員登録なしで独自問題と解説を体験できます。科目全体の実力や本番スコアを判定するものではありません。続けて学びたい方は、無料登録後に残り16問へ進めます。
▶ 登録不要・無料の6問を始める※本サイトは独立した非公式の試験対策コンテンツであり、株式会社グロービス/GMAPの公式サービスとは関係ありません。試験の形式や出題範囲は実施回・実施企業により異なる場合があります。
