最終更新:2026/08/27
資本コストとは「資金の出し手が期待する利回り」
会社は資金を、債権者(借入・社債)と株主(出資)から集めます。どちらも見返りを期待しており、それが会社にとってのコストです。
| 調達元 | コストの正体 | 会社が払うもの |
|---|---|---|
| 債権者 | 負債コスト(rD) | 利息 |
| 株主 | 株主資本コスト(rE) | 期待される利回り(配当と株価上昇) |
頻出のひっかけ/「株主資本にはコストがかからない」という選択肢が出ます。配当を出さなくても、株主は利回りを期待しています。これは明確なコストです。
WACC:2つを加重平均する
WACC = rD × (1 − 税率) × D/(D+E) + rE × E/(D+E)
(D:負債、E:自己資本)
負債と株主資本のコストを、それぞれの調達額の比率で重みづけして平均したものです。
なぜ負債側にだけ (1−税率) を掛けるのか
支払利息は損金に算入され、法人税を減らします。これを節税効果(タックス・シールド)と呼びます。実質的な負債コストは、その分だけ下がります。
一方、配当は税引後利益から支払われるため、節税効果がありません。だから株主資本コストには税率調整をしません。
この非対称性が、GMAP-BFで最も問われるポイントです。「株主資本にも税率調整をする」という選択肢は誤りです。
負債コストが株主資本コストより低い理由
節税効果のほかに、もう1つ理由があります。弁済の順位です。
会社が倒産した場合、債権者は株主より優先して資産から返済を受けられます。株主は最後に残ったものしか受け取れません。リスクが高い分、株主はより高い利回りを要求します。
| 債権者 | 株主 | |
|---|---|---|
| 弁済の順位 | 先 | 後(残余請求権) |
| リスク | 低い | 高い |
| 要求する利回り | 低い | 高い |
| 節税効果 | あり | なし |
CAPM:株主資本コストの推定
株主が期待する利回りは直接観察できないため、推定します。代表的な方法がCAPMです。
rE = 無リスク利子率 + β × マーケット・リスクプレミアム
- 無リスク利子率:国債利回りなど、リスクを取らずに得られる利回り
- マーケット・リスクプレミアム:市場全体が無リスク資産を上回る分の上乗せ
- β(ベータ):市場全体の動きに対する、その銘柄の感応度
βの読み方
| β | 意味 |
|---|---|
| 1.0 | 市場と同じ動き(市場が10%上がればその銘柄も約10%上がる) |
| 1.0より大きい | 市場より振れが大きい(ハイリスク) |
| 1.0より小さい | 市場より振れが小さい(ディフェンシブ) |
分散投資で消せるリスク、消せないリスク
| 種類 | 別名 | 内容 | 分散で消せるか |
|---|---|---|---|
| アンシステマティック・リスク | 個別リスク | その企業固有の要因 | 消せる |
| システマティック・リスク | 市場リスク | 景気や金利など市場全体の要因 | 消せない |
CAPMがβ(市場との連動性)だけを使うのは、個別リスクは投資家が自分で分散すれば消せるため、その分の上乗せ報酬は支払われないという考え方に基づきます。
「分散投資を続けてもリスクが一定以下に下がらない」というグラフが出題されます。残っているのがシステマティック・リスクです。
MM理論と最適資本構成
税金がない世界では、資本構成(負債と自己資本の比率)は企業価値に影響しないというのがMM理論の主張です。
負債を増やせば安い資金が増えますが、同時に株主のリスクが高まって株主資本コストが上昇し、結果として相殺されるためWACCは変わりません。
現実には節税効果がある
しかし現実には法人税があり、負債には節税効果があります。そのため適度な負債はWACCを下げ、企業価値を高めます。
一方で負債が増えすぎると倒産リスクが高まり、コストが上昇します。この両者の釣り合うところが最適資本構成です。
「無借金経営が常に最善」という選択肢は誤りです。節税効果を放棄しており、WACCを高いまま保っていることになります。
例題で確認する
問 CAPMにおいて、βが1.0である企業の状態として正しいものはどれか。
- (A) 市場が10%上昇しても、まったく動かない
- (B) 市場が10%上昇すれば、同じく10%程度の上昇が期待される
- (C) 市場が10%上昇すれば、その2倍の20%の上昇が期待される
- (D) 倒産する確率が100%である
解答:(B)
βは市場全体の動きに対する感応度です。1.0なら市場平均並みに動きます。(C) はβ=2.0の場合、(A) はβ=0の場合にあたります。
よくある質問
WACCは何に使いますか?
投資判断の基準(ハードル・レート)として使います。IRRがWACCを上回れば投資する、NPVの計算で割引率として使う、といった用途です。
負債を増やせばWACCは必ず下がりますか?
一定までは下がりますが、増えすぎると倒産リスクが高まり、負債コストも株主資本コストも上昇します。最適な水準が存在します。
この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
-
第1問 WACCの計算で、負債コストにのみ (1−税率) を掛ける理由はどれか。
支払利息は損金算入されて法人税を減らします。配当は税引後利益から支払われるため、株主資本コストには節税効果がありません。
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第2問 分散投資によって消去できないリスクはどれか。
景気や金利など市場全体に共通する要因は、どれだけ銘柄を混ぜても残ります。個別要因は分散で消せます。
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第3問 無借金経営が必ずしも最善とされない理由はどれか。
適度な負債は節税効果によってWACCを下げ、企業価値を高めます。無借金はその機会を捨てている状態です。
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