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全体像・読み進め方を確認する
違いは分母だけではない
ROE・ROA・ROICは、利益を生み出す効率を見る指標ですが、利益の種類、資本の範囲、期間の取り方が異なります。このページはGMAP-BFの企業会計・ファイナンスを学ぶための独自教材です。実在企業への投資助言や公式問題の再現ではありません。
| 指標 | 分子の例 | 分母の例 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| ROE | 当期純利益(連結では親会社株主に帰属する利益など) | 期首・期末の平均自己資本 | 利益と持分の帰属をそろえる |
| ROA | 当期純利益・営業利益など、採用する定義による | 平均総資産など | どの利益を使うROAかを先に確認 |
| ROIC | 税引後営業利益(NOPAT) | 事業に投下した資本 | 余剰現金等の調整と測定時点を確認 |
ROICの投下資本は、有利子負債+自己資本から余剰現金などを調整する捉え方や、事業資産から無利子の事業負債を除く捉え方があります。会社の開示・設問の定義を読み、調整済み数値にもう一度同じ控除をしないでください。WACCの時価構成比と、会計上の投下資本も別です。
以下の例では当期純利益を用いるROAと、指定した平均残高を使います。率を%で表示するときは割り算の結果を100倍します。財務三表で期間の利益と一時点の残高を確認し、EVAで資本コスト控除後の金額との違いを学べます。
ROEとROAを比べるときは、分母だけでなく利益の定義と測定期間も読みます。比率を経営目標に置く場合はKPIとKGIの位置づけを確認し、指標が上がったことだけで顧客価値や経営の改善を断定しないでください。
同じ会社でROE・ROA・ROICを計算する
架空の会社の1年間の当期純利益は24百万円、NOPATは36百万円。設問で指定された同期間の平均総資産600百万円、平均自己資本200百万円、平均調整済み投下資本450百万円を使います。非支配株主持分等の追加調整はありません。
| 指標 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| ROE | 24 ÷ 200 | 12% |
| ROA(純利益ベース) | 24 ÷ 600 | 4% |
| ROIC | 36 ÷ 450 | 8% |
ROICに24を使うと約5.33%となり、この設問のNOPAT定義と合いません。反対にROEに36を使うと18%となり、株主帰属の純利益と税引後営業利益を混ぜています。式の略称だけで数値を拾わないことが重要です。
自社株買いでROEが上がるとは限らない
他の条件を固定し、正の平均自己資本だけを減らす比較では、利益が正ならROEは上昇、損失なら数値はより負になります。実際の自社株買いには実施時期、資金調達、利息や運用収益への影響があり、平均残高も確認します。ここではそれらを分離した計算例を使います。
平均自己資本が200→160百万円となり、純利益24百万円が変わらない場合は12%→15%。一方、純損失が−24百万円で変わらなければ−12%→−15%です。利益ゼロならどちらも0%。自己資本がゼロなら割れず、負の自己資本では通常の『高いほどよい』という読み方ができません。
他の条件は固定。矢印は平均自己資本200→160百万円への変更前後の計算を表し、実際の自社株買いの効果を保証するものではありません。
↓
24÷160=15%
3ポイント上昇
↓
−24÷160=−15%
3ポイント低下
分母だけでなく利益の符号・変化・測定期間を確認
金額単位は百万円。平均自己資本はいずれも正。利益がゼロなら0%、分母がゼロなら計算不能。負の自己資本で通常の高低比較をしません。
借入を増やすだけでROEが改善するわけでもありません。追加事業の収益と税引後の利息負担、損失の可能性を照合します。WACCと財務リスクも合わせ、指標の上昇を事業の実力向上や株主価値の増加と同一視しないでください。
DuPont分解で利益率・回転率・レバレッジを分ける
当期純利益ベースなら、ROA=売上高純利益率×総資産回転率。さらにROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ(平均総資産÷平均自己資本)と分解できます。掛け算の途中で同じ売上高・資産が約分されることを確かめましょう。
売上高800、純利益24、平均総資産600、平均自己資本200(すべて百万円)なら、3%×(800÷600)×3=12%。途中を丸めすぎず計算します。利益率の改善か、資産活用か、自己資本に対する資産規模の変化かを切り分けられますが、式だけで企業の戦略や将来成果までは確定しません。
比較する企業どうしで利益の定義・連結範囲・業種・一時的損益が違えば、単純順位づけは避けます。利益の段階も確認してください。
流動比率が高くても支払いが安全とは断定しない
| 指標 | 計算例の定義 | 追加して読む情報 |
|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債 | 在庫・債権の回収可能性と支払時点 |
| 当座比率 | 現預金・短期換金可能な証券・売上債権等÷流動負債 | 換金可能性、回収時期、対象資産の定義 |
| 自己資本比率 | 自己資本÷総資産 | 事業リスク、資産内容、業種 |
| 固定比率 | 固定資産÷自己資本 | 長期借入など他の長期資金との組合せ |
当座資産は『流動資産から在庫だけを引いたもの』と常に一致するわけではありません。前払費用など、迅速な支払原資にならない項目も確認します。独自例として現金30、短期換金可能な証券10、売上債権50、在庫80、前払費用10、流動負債100百万円なら、流動比率180%、当座比率90%です。
180%だから直ちに安全、90%だから直ちに支払不能とは判断できません。売上債権の回収日より支払日が早くないか、在庫が売れるか、使える資金調達枠はあるかを確認します。『率から分かること』と『追加情報が必要なこと』を分ける練習です。
効率性と資金回収の期間を読む
総資産回転率=売上高÷平均総資産。棚卸資産回転率を売上原価÷平均在庫で求める場合、在庫日数は平均在庫÷売上原価×年間日数です。売上高基準の指標と混ぜず、設問の定義に合わせます。
売上債権回収日数=平均売上債権÷掛売上高×年間日数。総売上高で近似する場合は現金売上の影響を確認します。仕入債務支払日数は平均仕入債務÷仕入高×年間日数などで測り、売上原価を代用する場合はその前提を確認します。
在庫日数40日+回収日数30日=営業サイクル70日。支払日数25日ならCCC=40+30−25=45日です。これは平均的な資金拘束期間の整理。支払いを遅らせればよいという意味ではなく、仕入先との条件、供給安定性、在庫不足の影響も見ます。定義はOpenStaxの営業・資金回収サイクルの説明も参照しています。
出典と復習の進め方
定義の参照:日本取引所グループ:自己資本当期純利益率、OpenStax:利益率とDuPont分解、OpenStax:流動性指標、Damodaran:投下資本とROC(2011年3月21日)。確認日2026年9月9日。数値・図・問題は当サイト独自です。
まず各率の分子・分母・期間を言葉で説明し、次に黒字条件を赤字へ変えて再計算してください。記事末尾の3問は説明と近い条件を含む復習用です。全問正解だけで初見問題への対応や単元習得を保証するものではありません。
ROEは、利益額だけでなく借入と自己資本の構成にも左右されます。財務レバレッジの上振れ・下振れで、同じ資産でも金利を境にROEの大小が逆転する条件を計算します。
よくある質問
ROE・ROA・ROICの違いは分母だけですか?
いいえ。ROEでは株主に帰属する純利益、ROICではNOPATを使うなど分子も異なります。ROAの利益定義にも複数あり、期間・平均残高・調整項目をそろえて比較します。
自己資本と純資産は同じですか?
常に同じではありません。JPXのROE説明では、純資産合計から株式引受権・新株予約権・非支配株主持分を除いて自己資本を求めます。設問や開示の定義に従ってください。
自社株買いをすれば必ずROEは上がりますか?
必ずではありません。利益が正で一定、正の平均自己資本だけが減る条件なら上がります。損失ならより負になり、実際には取得時期・資金調達・利益への影響も確認が必要です。
最後に、図で全体像を振り返ります
同じ利益を使う定義もありますが、常に同じとは限りません。分子を決めずに分母だけで式を覚えないようにします。
利益・資本・期間をひと組で確認する
ROE・ROA・ROIC|図の後に本文へ戻れます
- ROE株主に帰属する利益 ÷ 対応する自己資本
- ROA定義で指定された利益 ÷ 総資産
- ROICNOPAT ÷ 調整済みの事業投下資本
平均残高・連結範囲・余剰現金等の調整は設問と開示に従う。3指標の対応関係であり、計算の順番ではありません。
この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
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第1問/全3問 ある会社の1年間の純利益は24百万円、NOPAT36百万円。計算に使う同期間の平均総資産600百万円、平均自己資本200百万円、平均調整済み投下資本450百万円が与えられた。ROAは純利益ベースとする。ROE・ROA・ROICの組合せはどれか。
(A)が正解。ROE=24÷200=12%、ROA=24÷600=4%、ROIC=36÷450=8%です。(B)はROEとROAにもNOPAT36を使っています。(C)はROICに純利益24を使った値です。(D)はROEとROAの分母を逆にしています。いずれも同じ期間の指定済み平均残高なので、さらに平均を取り直す必要はありません。
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第2問/全3問 自社株買い案について、平均自己資本が200から160百万円へ減る比較をする。他の条件は変えない。ケース甲は純利益24百万円、ケース乙は純損失−24百万円がそれぞれ一定。この数値条件に基づくROEの変化として正しいものはどれか。
(B)が正解。甲は24÷200=12%から24÷160=15%へ。乙は−24÷200=−12%から−24÷160=−15%へ動きます。(A)は利益の符号を無視し、乙も改善としています。(C)は変更前後が逆です。(D)も誤りで、分母は200も160も正なので計算できます。ただし実際の採否には取得時期や利益への影響も必要です。
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第3問/全3問 流動資産は現金30、短期換金可能な証券10、売上債権50、在庫80、前払費用10百万円。流動負債100百万円。当座資産には現金・上記証券・売上債権だけを含める。これらの数値からの説明で正しいものはどれか。
(C)が正解。流動資産は180、当座資産は30+10+50=90なので、各180%と90%です。(A)の100%は在庫だけを引き前払費用を残した値で、時点確認の省略も不適切です。(B)は2指標が逆です。(D)は率だけから支払不能へ飛躍しています。回収の確実性、支払期日、利用可能な資金も見る必要があります。
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