最終更新:2026/08/28
企業価値は「将来生む現金の現在価値」
DCF法(Discounted Cash Flow)は、その企業が将来生み出すフリー・キャッシュフローを現在価値に割り引いて合計する方法です。
この考え方の背景には、「会社の価値は過去の実績ではなく、これから稼ぐ力で決まる」という前提があります。
DCF法は帳簿上の資産額を見ません。だから思い入れや取得原価は価値に含まれません。将来のキャッシュフローに反映されないものは、価値としてカウントされないという点が問われます。
算出の手順
- 予測期間(通常5〜10年)のフリー・キャッシュフローを見積もる
- 割引率としてWACCを用いる
- 各年のFCFを現在価値に割り引く
- 予測期間の先を継続価値として計算し、現在価値に割り引く
- ①〜④を合計して事業価値を出す
- 非事業資産を加え、有利子負債を引いて株主価値を出す
継続価値(ターミナル・バリュー)
会社は予測期間で終わるわけではありません。その先の価値をまとめて評価するのが継続価値です。
最も一般的な仮定は、予測期間の翌年以降、キャッシュフローが永久に一定(または一定率で成長)し続けるというものです。
PV = CF ÷ (r − g) (r:割引率、g:永久成長率)
この式の弱点
成長率 g が割引率 r を上回ると、数式が破綻します(分母がゼロ以下になる)。永久に市場平均を超えて成長し続ける前提は置けない、という制約がここに表れています。
企業価値・事業価値・株主価値
混同されやすい3つを整理します。
| 用語 | 内容 | 誰のものか |
|---|---|---|
| 事業価値 | 本業が生む価値 | — |
| 企業価値(EV) | 事業価値+非事業資産 | 債権者と株主の両方 |
| 株主価値 | 企業価値 − 有利子負債 | 株主のみ |
EVは債権者と株主の双方に帰属する価値です。「株主の取り分を減らすための概念」という選択肢は誤りになります。
マルチプル法との比較
実務では、類似企業の指標倍率から評価するマルチプル法も使われます。
| DCF法 | マルチプル法 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 将来のCFから積み上げる | 類似企業と比べる |
| 長所 | 事業の実態を反映できる | 簡便で市場感覚に合う |
| 短所 | 前提の置き方で大きく変わる | 類似企業が見つからないと使えない |
DCF法は前提の置き方次第で結果が大きく動く点が最大の弱点です。だから複数の方法を併用します。
例題で確認する
問 DCF法において、企業価値に含まれないものとして扱われるのはどれか。
- (A) 将来にわたって得られる見込みの営業キャッシュフロー
- (B) 事業に必要な設備のメンテナンス費用
- (C) 創業以来その事業を続けてきたという愛着や情緒的価値
- (D) 保有している現預金などの非事業資産
解答:(C)
DCF法が評価するのは将来のキャッシュフローに現れるものだけです。愛着や思い入れは現金を生まないため、価値としてカウントされません。
よくある質問
DCF法とNPVは同じものですか?
計算の考え方は同じです。個別の投資案件に使えばNPV、企業全体に使えば企業価値評価になります。
継続価値は全体のどれくらいを占めますか?
案件によりますが、企業価値の過半を占めることも珍しくありません。だから継続価値の前提の置き方が結果を大きく左右します。
この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
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第1問 DCF法における継続価値(ターミナル・バリュー)の一般的な仮定はどれか。
会社は予測期間で終わらないため、その先をまとめて評価します。永久成長率が割引率を上回ると数式が破綻します。
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第2問 企業価値(EV)と株主価値の関係として正しいものはどれか。
企業価値は債権者と株主の双方に帰属します。そこから負債を引いた残りが株主のものです。
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第3問 DCF法の弱点として指摘される点はどれか。
成長率や割引率の置き方で評価額が大きく動きます。①はマルチプル法の弱点です。
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