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CFの帰属と時点をそろえてから、価値を調整する
本記事のFCFFモデルの手順です。年末2の継続価値を現在へ戻し、余剰現金・負債を一度ずつ調整します。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ進めます。
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DCFは予測と割引率に基づく評価で、確定した売買価格ではない
DCF(割引キャッシュフロー法)は、将来の予測CFをそのリスク等に対応する率で現在へ割り引き、価値を評価する方法です。GMAP-BFのファイナンス学習として、以下では単純化した架空の会社を扱います。実在企業の価格推奨や公式問題の再現ではありません。
過去の帳簿額をそのまま価値とする方法ではありませんが、財務諸表を見なくてよいという意味でもありません。予測の出発点、設備や運転資本への投資、非事業資産の確認に会計情報を使います。主観的な愛着を別の金額として無条件に加算することと、ブランド等が将来CFに及ぼす影響を見積もることも別です。
現在価値とNPVは割引の考え方を共有します。ただし、価値の推定額と、取得費用などを控除した投資のNPVを同じ数値と決めつけないでください。
FCFFとFCFEでは、割引率と求める価値が違う
| CF | 帰属の整理 | 対応する割引率 |
|---|---|---|
| FCFF | 事業投資等の後、資金提供者全体向け | 対象事業と整合するWACC |
| FCFE | 利息・純借入等も反映した普通株主向け | 株主資本コスト |
単純化した関係はFCFE=FCFF−税引後利息+純借入(新規借入−元本返済)です。FCFFを株主資本コストで割り引く、FCFEをWACCで割り引く、と組合せを変えると、別の評価になってしまいます。
独自例としてFCFF80、税引後利息12、新規借入30、元本返済50(万円)なら、純借入は−20、FCFE=80−12−20=48万円。元本返済を収入として足したり、FCFFから株主価値へ変換する調整とCF内の返済を混ぜたりしないでください。
WACCの時価構成比と税効果も確認します。予測と割引率の通貨、名目/実質、税引前/後、事業リスクをそろえ、会社全体の率を全案件へ一律に適用しません。
継続価値は予測最終年の価値なので、もう一度割り引く
n年まで個別にCFを予測し、その後を持続的な一定成長とするモデルでは、n年末の継続価値(TV)=翌年CF<sub>n+1</sub>÷(r−g)。そのTVを現在へ戻すには、さらに(1+r)<sup>n</sup>で割ります。
この永久成長モデルではr>gが必要です。r=gなら分母がゼロ、g>rなら正の成長CFの無限級数をこの有限の式で評価できません。負の結果が出たから『成長企業には負の価値がある』とは読みません。
式へ値を入れるだけでなく、成長を続ける設備投資・運転資本・収益性の整合も必要です。高い成長率なのに必要な再投資をゼロにする、といった前提を避けます。継続価値は会社の清算だけを意味せず、別のモデルを採用する場合は前提を区別します。
独自例:2年予測から事業価値を求める
評価時点を現在(年0)とし、年末払いの事業FCFFを1年末55万円、2年末60.5万円と予測します。3年末は61.71万円、その後は毎年2%成長。各CFにはその成長に必要な再投資を織り込み済みとし、全期間の対応WACCは年10%と仮定します。
| 項目 | 計算 | 現在価値(万円) |
|---|---|---|
| 1年末CF | 55÷1.1 | 50 |
| 2年末CF | 60.5÷1.1² | 50 |
| 2年末の継続価値 | 61.71÷(10%−2%)=771.375、その後1.1²で割る | 637.5 |
| 事業価値 | 50+50+637.5 | 737.5 |
- ① 年末2の価値を求める3年末CF61.71 ÷ (10%−2%)
=771.375万円
3年末以降のCFを年末2へまとめた値 - ② 現在(年0)へ戻す771.375 ÷ 1.1²
=637.5万円
現在へ戻す2年分の割引が必要 - ③ 同じ現在時点の価値を合計する1年目CFの現在価値50
+2年目CFの現在価値50
+継続価値の現在価値637.5
=事業価値737.5万円
余剰現金を含まない事業価値から:
737.5 + 42.5 − 180 = 株主価値600万円
手順は計算の順番。全CFは年末払い、WACC10%、永久成長2%、再投資織込み済み。余剰現金42.5、有利子負債時価180万円、他の調整なし。3年末CFを継続価値と別に二重加算しません。
771.375万円を50+50へ直接足すと871.375万円になり、年末2の金額と現在の金額を混ぜています。61.71万円はTVの分子に既に含まれる3年末CFなので、TVの現在価値とは別にもう一度加えません。
2年末CFをそのままTVの分子に使うのも、この与件とは違います。翌年以降の持続成長に対応したCFが必要です。年央払いなど別のタイミングなら、割引の時点も変更します。
事業価値から株主価値へ:余剰現金と負債を二重計上しない
上の事業価値737.5万円には余剰現金を含めていないとします。現在の余剰現金42.5万円、有利子負債時価180万円があり、他の非事業資産・優先株・非支配株主持分等の調整はないものとします。
普通株主価値=737.5+42.5−180=600万円
同じ条件なら、純有利子負債=180−42.5=137.5万円を一度だけ引いても600万円です。純有利子負債を引いた後に余剰現金をもう一度足すと二重計上になります。事業運営に必要な現金を、すべて余剰として加えることも避けます。
日本語の『企業価値』は資料によって範囲が違います。上の事業+非事業の合計780万円と、株式等と負債の時価から現金等を控除するEV(enterprise value)を無条件に同一視しないでください。単純化したこの例でEV=普通株主価値+有利子負債−余剰現金と定義すれば、600+180−42.5=737.5万円です。
実務では他の持分や負債類似項目も確認します。『EVだから必ず負債だけを引けばよい』と名称だけで決めず、何が既に含まれているかを表で照合します。M&Aの目的と統合では、買収価格と買収後の実現可能性も別に検討します。
感度を見ても、前提が正しいと証明されたわけではない
同じ予測CF列を固定して割引率だけを変えれば、正の将来CFの現在価値は割引率が高いほど小さくなります。ただし、現実の成長やリスクが変わるときに、CFだけを据え置いてよいとは限りません。
上の例で3年末CF61.71万円を固定し、g=2%のままr=9%へ変えた場合のTVは約881.57万円、r=11%なら約685.67万円です。これはどちらも年末2の値で、現在へ割り引く作業は残っています。計算上の感度と、実現する確率を混同しないでください。
類似会社のEV/EBITDA等を使うマルチプル法でも、成長・リスク・会計方針・比較時点の違いを確認します。市場倍率を使えば仮定が不要になるわけではありません。複数手法の結果が近いことも、共通して誤った前提を置いていない証明にはなりません。
短期の業績指標と長期の価値の違いはEVAの独自例へ、平均残高や利益定義の確認はROE・ROA・ROICの整理へつなげてください。
出典と確認問題
参照:CFA Institute:Free Cash Flow Valuation、Damodaran:継続価値と持続成長、CFA Institute:EV倍率の定義。2026年9月9日確認。数値・図・例題は独自です。
本文の例が確認問題にも登場する復習用教材です。全問正解だけで、初見の企業価値評価や単元習得を保証しません。計算する前に『誰向けのCF』『何年時点の価値』『まだ足し引きしていない項目』を記入してください。
図解とケースで、理解を一段深める
IRRが高い案とNPVが大きい案は一致しないことがあります。1年後に回収する二つの独自投資案で、率・金額・予算制約を区別します。 NPVとIRRで判断が分かれる理由で具体的に確認できます。
このテーマを、図と独自ケースで深める
期首・期末・繰延の現在価値では、前提・具体例・判断できる範囲を順に確認できます。
用語の境界を比較し、ケースで確かめる
ファイナンスの用語を比較するでは、似た言葉の違いを短い定義と具体例で整理し、図解・独自ケース・条件変更の確認問題につなげています。
よくある質問
継続価値は、そのまま現在の事業価値に加えますか?
いいえ。予測最終年nの継続価値は、その年末の価値です。現在へ(1+r)のn乗で割り引いてから、個別予測期間のCF現在価値へ加えます。
DCFでは必ずWACCを使いますか?
FCFFには対応するWACC、FCFEには株主資本コストを使うのが基本です。CFの帰属、税、通貨、名目/実質、リスクが整合しているか確認します。
EVと日本語の企業価値は同じ意味ですか?
資料ごとに範囲の確認が必要です。事業価値に非事業資産を加えた合計と、株式等・負債の時価から現金等を控除したEVを、名称だけで同一に扱わないでください。
CFの帰属と時点をそろえてから、価値を調整する
本記事のFCFFモデルの手順です。年末2の継続価値を現在へ戻し、余剰現金・負債を一度ずつ調整します。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ戻れます。
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この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
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第1問/全3問 FCFFは1年末55万円、2年末60.5万円、3年末61.71万円で、以後毎年2%成長する。成長に必要な再投資は織り込み済み、WACCは全期間年10%。年末2の継続価値は771.375万円である。この情報から現在の事業価値を計算したものとして正しいのはどれか。
(B)が正解。55÷1.1=50、60.5÷1.21=50、771.375÷1.21=637.5、合計737.5万円です。(A)は継続価値を年末2から現在へ割り引いていません。(C)はこの設問にない負債等の調整を勝手に加えています。(D)は継続価値が表す3年目以降のCFを落としています。事業価値と、追加情報が必要な株主価値を区別します。
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第2問/全3問 現在の事業価値は737.5万円で、余剰現金を含んでいない。余剰現金42.5万円、有利子負債時価180万円があり、他の非事業資産・優先株・非支配株主持分等の調整はない。普通株主価値の計算として正しいものはどれか。
(D)が正解。737.5+42.5−180=600万円です。(A)はまだ含まれていない余剰現金を加えていません。(B)は負債を控除ではなく加算しています。(C)では純有利子負債に現金控除を反映済みなのに、もう一度現金を加えています。『純』という名前だけで処理せず、各項目に何を含めたかを確かめれば二重計上を避けられます。
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第3問/全3問 【複合判断】ある評価案では普通株主向けFCFEをWACCで割り引き、正のCFの永久成長式にr=g=3%を使っている。予測額は検算済みとする。次の点検意見の適否を選べ。 【判断Ⅰ】FCFEと割引率の帰属をそろえ、対応する株主資本コストを確認する。 【判断Ⅱ】r=gでは分母がゼロとなるため、その永久成長式による有限の継続価値を採用できない。
(A)が正解。判断Ⅰ:適切。普通株主向けFCFEには株主資本コストを対応させます。判断Ⅱ:適切。正のCFを持続成長させる式にはr>gが必要で、r=gを価値ゼロと扱うことはできません。(B)は永久成長式の条件を見落とし、(C)はCFと割引率の対応を見落としています。(D)は両方を見落としています。予測額の検算だけでは、適用する割引率やモデル条件の検証を代替できません。
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