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最初に押さえる結論
黒字でも、資本コストを上回ったとは限らない。
EVA(経済付加価値)は、税引後営業利益(NOPAT)から、投下資本に資本コスト率(WACC)を掛けた金額を差し引く業績指標です。率ではなく金額で表します。
式は EVA=NOPAT−投下資本×WACC。WACCには負債と株主資本のコストを織り込みます。株主が資金を提供する機会費用も考えるため、実際に支払った利息だけを引く計算とは違います。
| 項目 | このページでの扱い | 混同しないもの |
|---|---|---|
| NOPAT | 税引後の営業利益 | 支払利息控除後の当期純利益ではない |
| 投下資本 | 利益を生む事業へ投入した資本 | 売上高や時価総額をそのまま使わない |
| WACC | 対象期間に対応する資本コスト率 | 10%は計算では0.10 |
| 資本コスト額 | 投下資本×WACC | 全額が現金支出になるという意味ではない |
実務ではNOPATや投下資本の会計調整、期首・平均などの資本の測り方をそろえる必要があります。ここではその調整を終えた数値を設問で与えます。WACCの考え方と企業価値・DCFを区別して学ぶと、単年度の業績と将来価値を混同しにくくなります。
以下は当サイトの教材を使った学習用の例です。公式問題・過去問の転載や再現ではなく、本番の出題頻度や合格を保証するものではありません。概念の定義と、個別の設問で成り立つ判断を分けて読んでください。
EVA・業績評価を例題の条件に当てはめる
最初は解説付きの例題で、どの条件が判断に必要かを確認します。複数の判断が含まれる場合は、一方の結論をもう一方へ流用せず、それぞれの与件で検討してください。
例題:条件と選択肢を省略せず読む
ある事業の1年間の税引後営業利益(NOPAT)は84百万円、同じ期間のEVA計算に用いる調整済み投下資本は900百万円、年率WACCは10%だった。追加の会計調整は行わない。この事業のEVAはいくらか。
- (A) 6百万円
- (B) −6百万円
- (C) 75.6百万円
- (D) 174百万円
例題の解説:結論を支える条件は何か
正解:(B) −6百万円
(B)が正解。資本コスト額は900×0.10=90百万円、EVAは84−90=−6百万円です。(A)は差の符号を逆にしています。(C)の75.6は84×0.9で、NOPATに10%を掛けて減らした誤計算です。(D)は84+90と、控除すべき資本コスト額を足しています。営業利益が黒字であることと、資本提供者の要求水準を上回ることは別です。
- NOPAT
- 資本コスト額
現状:84 − 900 × 10% = −6百万円
拡張案:100 − 1,200 × 9% = −8百万円
年間EVAの変化:2百万円の減少
同じ期間・調整方法による仮定の比較。棒はNOPATと資本コスト額で、EVAそのものの棒ではありません。EVAは2本の差額です。資本コスト額は実支払利息だけではなく、株主資本の機会費用も含みます。長期の投資採否はこの図だけで決まりません。
この例題を復習するときの視点:率を掛ける対象はNOPATではなく投下資本。税引後の数値に再び税金を掛けないでください。
解説の結論は、上の設問で与えられた条件についてのものです。条件や目的が変わる別のケースでも同じ選択肢になる、という一般則として覚えないでください。
条件を変えて考える・実務と混同しない
条件を変えて考えます。NOPAT84百万円と投下資本900百万円を固定した場合、EVAがゼロとなるWACCは84÷900=約9.33%です。WACCが8%なら84−72=12百万円、12%なら84−108=−24百万円となります。これは他の条件を固定した感度分析で、経営者がWACCだけを自由に設定できるという意味ではありません。
大きな事業はEVAの金額も大きくなりやすいため、規模の違う事業を金額だけで順位づけしないことも大切です。収益性・効率性の指標や投資機会、リスクと合わせて読みます。
復習では、①率と金額、②営業利益と資本コスト控除後、③単年度業績と長期企業価値、の三つの境界を説明してください。企業名の暗記だけでは、この区別を確かめられません。
自力で確かめ、別の問題へつなげる
- 「EVA・業績評価は何を判断する概念か」を、資料を閉じて一文で言う
- 例題の正答と誤答について、根拠となる条件を一つずつ挙げる
- 下の3問を解き、迷った条件や解答に要した時間を残す
確認用の3問には上で解説した例題も含まれます。読後の正解は理解確認であり、初見で解けることやテーマの習得完了を示す診断ではありません。解説を読んだ直後だけでなく、間隔を空けて別の問題にも取り組み、同じ誤りが再発していないか確認します。
確認した資料と学習例の位置づけ
算式はStern Value ManagementのEVA解説、測定上の調整と単年度評価の限界はNYU・Aswath DamodaranのEVA講義資料を確認しました(確認日:2026年9月9日)。当ページの企業・数値・選択肢は独自の学習用事例です。
関連する条件を、別のケースで確かめる
財務の結果に加え、その結果を支える顧客・工程・能力の指標も確認できます。 財務と非財務をつなぐBSCで、図・解答・検算を確認できます。
よくある質問
EVAがマイナスなら赤字企業ですか?
必ずしもそうではありません。NOPATがプラスでも、投下資本にWACCを掛けた資本コスト額を下回ればEVAはマイナスです。会計上の赤字と同一ではありません。
資本コストは銀行へ払う利息だけですか?
いいえ。WACCには負債と株主資本のコストを織り込みます。株主の要求収益に対応する機会費用を含み、資本コスト額のすべてが現金の支払いになるわけではありません。
EVAが上がれば、その施策を採用すべきですか?
単年度の改善だけでは決まりません。将来の収益見通しやリスク、会計調整の一貫性も確認し、長期価値の評価と組み合わせます。
この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
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第1問/全3問 ある事業の1年間の税引後営業利益(NOPAT)は84百万円、同じ期間のEVA計算に用いる調整済み投下資本は900百万円、年率WACCは10%だった。追加の会計調整は行わない。この事業のEVAはいくらか。
(B)が正解。資本コスト額は900×0.10=90百万円、EVAは84−90=−6百万円です。(A)は差の符号を逆にしています。(C)の75.6は84×0.9で、NOPATに10%を掛けて減らした誤計算です。(D)は84+90と、控除すべき資本コスト額を足しています。営業利益が黒字であることと、資本提供者の要求水準を上回ることは別です。
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第2問/全3問 現状の年間NOPATは84百万円、対応投下資本900百万円、年率WACC10%。設備拡張案では年間NOPAT100百万円、対応投下資本1,200百万円、年率WACC9%を見込む。各値の測定期間と調整方法は統一されている。この数値だけで比較した年間EVAの変化として正しいものはどれか。
(D)が正解。現状は84−900×0.10=−6百万円。拡張案は100−1,200×0.09=−8百万円なので、変化は−8−(−6)=−2百万円です。(A)の16はNOPATの増加額だけです。(B)の8は拡張案のEVAの絶対値で、増加額ではありません。(C)はWACC低下が資本増加をちょうど相殺すると誤認しています。ここで分かるのは年間の比較で、拡張案の長期的な採否までは決まりません。
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第3問/全3問 研究開発費を削る案により、今期のEVAは改善する見込みになった。一方、将来の製品競争力と収益への影響はまだ評価されていない。経営会議での判断として最も適切なものはどれか。
(A)が正解。今期の改善と、将来の収益やリスクを含む価値評価を分けます。(B)は短期指標の改善から長期価値の増加へ飛躍しています。(C)は資本コスト額を控除するEVAと会計利益を同一視しています。(D)も行き過ぎで、年間業績の情報としての計算結果は残し、別の評価と組み合わせられます。EVAの符号だけを、すべての投資判断の答えにしないことが重要です。
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