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価格は、3つの視点を重ねて決める
図は確認する視点の例で、固定した手順ではありません。数量と総費用も見積もります。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ進めます。
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新製品の代表的な価格戦略を対比する
新製品の導入時には、高価格から始めるスキミングと、低価格で浸透を狙うペネトレーションが代表的な対比になります。すべての価格戦略がこの二つに尽くされるわけではありません。定義はOpenStaxの新製品の価格戦略を参照しています。
| スキミング・プライシング | ペネトレーション・プライシング | |
|---|---|---|
| 価格 | 高く設定する | 低く設定する |
| 狙い | 高い支払意思を持つ層から収益を得る | 低い導入価格で販売量・市場浸透を狙う |
| 対象 | 価格に敏感でない層 | 価格に敏感な層 |
| 検討材料 | 高価格でも選ぶ層の存在/差別化の維持 | 値下げへの需要反応/数量と費用の関係 |
| 語源 | 上澄みをすくう(skim) | 市場に浸透する(penetrate) |
覚え方:スキミング=上澄みをすくう=高く売る。語源で紐づけると逆に覚えません。
スキミングが向く場面
高価格で販売を始め、その後に価格を下げて対象を広げる考え方です。採用を検討する際には、次の条件を確かめます。
- 製品が明確に差別化されている
- その製品の価値に高い価格を払う層が存在する
- 高価格を支える差別化が、必要な期間維持できる
- 販売量と単位当たり利益で、開発費などを回収できる見通しがある
高い利益機会は競合の参入や模倣を招く可能性があります。参入しやすい市場では高価格を維持できる期間が短くなり得ますが、「参入障壁が低ければ一切成立しない」とは断定できません。価格を下げた際の既存顧客の受け止め方も検討します。
ペネトレーションが向く場面
導入時の低価格で購入を促し、販売量や市場浸透を狙います。初期赤字や後からの値上げが必須という意味ではなく、シェアを得れば利益が保証されるわけでもありません。次の要因がある場合は、需要と費用の見積もりに織り込みます。
- 規模の経済が効く(量産でコストが下がる)
- 経験曲線効果が期待できる
- ネットワーク外部性がある(利用者が増えるほど価値が上がる)
- 模倣されやすく、先行者利益を取りに行きたい
想定ほど数量が増えない場合や、競合も値下げする場合は、利益を確保できない恐れがあります。ネットワーク効果や規模の経済・経験曲線も、存在するだけで十分ではありません。値下げ幅、実現する数量、変動費、追加設備や支援の固定費を確かめます。
その他の主要な価格戦略
| 戦略 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| キャプティブ・プライシング | 本体と、その使用に必要な補完品を組み合わせて価格を設計 | 本体の導入価格を抑え、専用消耗品で収益を得る案 |
| ロス・リーダー価格 | 特定品を極めて安くし、他の商品の購入も促す | 集客用の目玉品と、通常価格の関連品 |
| 名声価格(プレステージ) | 高価格で高級感や品質の認識を支えようとする | 高級品として位置づける価格 |
| 端数価格 | 980円のように端数にする | 小売全般 |
| 二部料金制 | 基本料金+従量料金 | 携帯電話、電気 |
| バンドリング | 複数を組み合わせ、一つの価格で提供 | 個別販売とは別のセット価格 |
安い商品がある、だけでは分類できません。使用に必要な専用補完品との組み合わせなのか、客寄せによる他商品の販売なのかを見ます。本体が必ず安い、セットが必ず割安、高価格なら実際の品質も高い、とは限りません。
補完品との関係はOpenStaxの既存製品の価格戦略、客寄せの考え方はグロービス経営大学院のロスリーダー解説を参照しています。ロスリーダーを原価割れで説明する教材もあります。価格の低さだけでなく、設問中の他商品への集客目的を確認します。
価格設定の3つの基準
価格そのものをどう決めるかにも、3つの考え方があります。
| 基準 | 決め方 | 弱点 |
|---|---|---|
| コスト基準 | 原価と目標利益を出発点にする | それだけでは顧客の支払意思を捉えられない |
| 競争基準 | 競合の価格を参照して決める | 追随だけでは自社の価値や採算を見落とす |
| 価値基準 | 顧客が感じる価値から決める | 価値の測定が難しい |
原価に利益を加える方法がコストプラス法(原価加算法)です。原価だけを基準にする計算では、顧客の支払意思や需要反応は分かりません。実際の検討では競争・価値の情報も合わせられます。価値の対象はSTP、時間や手間まで含む負担は4CのCostとつなげて考えます。
独自計算例:10%値下げ、12%数量増でも利益は減る
架空の単一商品について、ある1か月の価格を1,000円から900円へ変更し、販売数量が100個から112個になったとします。1個当たり変動費は600円、月間固定費は20,000円で変わらず、税金・在庫変動・その他の収支は考えません。これは計算用の仮定で、値下げが数量増の原因と確認された実績ではありません。
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
|---|---|---|
| 売上高=価格×数量 | 100,000円 | 100,800円 |
| 変動費=600円×数量 | 60,000円 | 67,200円 |
| 限界利益=売上高−変動費 | 40,000円 | 33,600円 |
| 利益=限界利益−固定費 | 20,000円 | 13,600円 |
- 変動費
- 固定費
- 利益
売上:100,000円 → 100,800円
利益:20,000円 → 13,600円(32%減)
1,000円×100個から900円×112個へ。単位変動費600円、月間固定費20,000円を一定とした計算例です。棒全体が売上で、利益はその内訳。税金・在庫変動・その他の収支は考慮していません。
売上高は0.8%増えましたが、1個当たり限界利益は400円から300円へ下がり、利益は6,400円、率にして32%減っています。売上高の増加率だけで値下げを評価できません。
同じ売上高を保つには100,000÷900≒111.11個が必要で、整数なら112個です。一方、同じ利益20,000円を保つには(20,000+20,000)÷(900−600)≒133.33個、整数なら134個が必要です。売上を保つ数量と、利益を保つ数量は違います。数量を増やすため固定費も増えるなら、もう一度計算します。
例題で確認する
問 規模の経済が強く働く市場で、新製品を低価格で投入して一気に市場シェアを獲得する価格戦略はどれか。
- (A) スキミング・プライシング
- (B) ペネトレーション・プライシング
- (C) 名声価格
- (D) コストプラス法
解答:(B)
低い導入価格で市場浸透を狙うのでペネトレーションです。数量増による単位費用の低下は検討材料ですが、下げた価格と総費用の下で利益が残るかは別に確認します。
(A) は高価格から始める方向、(C) は高級感などの認識を支える高価格、(D) は原価を基準に価格を算出する方法です。価格の水準・狙い・決め方を混同しないでください。
図解とケースで、理解を一段深める
価格を下げて数量が増えても、売上や利益が増えるとは限りません。価格弾力性の分母と絶対値、中点法との違いを独自の数値例で整理します。 価格弾力性の計算で具体的に確認できます。
応用計算:売上を保つ数量と、利益を保つ数量は違う
価格1,000円、数量100個、1個当たり変動費600円、固定費20,000円の架空例で、価格を900円へ下げます。他の単価・費用条件を固定し、税金や在庫変動は考えません。元の売上100,000円を維持するには100,000÷900=111と9分の1個なので、整数では112個必要です。
一方、元の利益20,000円を維持するには、1個当たり限界利益300円で固定費と利益の合計40,000円を賄う必要があり、40,000÷300=133と3分の1個、整数では134個必要です。112個では売上100,800円でも利益13,600円。目標が売上か利益かで必要数量が変わります。
図解:同じ値下げでも、目標で分母が変わる
公式問題の再現ではありません。矢印は思考手順や仮説を示し、実測された効果を意味しません。
数量を一個少なくして確かめると、111個の売上は99,900円、133個の利益は19,900円です。112個・134個という切上げが必要な理由を確認できます。
値下げ案を評価するための追加情報
134個売れる需要と供給能力があるかは、上の計算だけでは分かりません。受注増で残業や設備の費用が増えるなら、固定費一定の仮定も見直します。値下げ後の数量増を観測しても、季節や販促などが同時に変わっていれば、価格だけの効果と断定できません。
公式を別の場面でも選べるようにする練習は初見問題への応用手順へ。価格・数量・費用のうち、何を変え、何を固定するかを毎回言葉にしてください。
顧客別に異なる価格を設定する場合は、分類できる条件と追加費用も必要です。価格差別と一律価格の利益比較で、売上ではなく限界利益の差を確認します。
企業の価格設定と、市場の均衡価格は分けて読みます。需要・供給曲線の交点とシフトでは、価格と数量の二つを同時に計算します。
よくある質問
スキミングとペネトレーション、どちらが優れていますか?
条件によります。高価格でも買う層と差別化の維持、値下げへの需要反応、数量と費用の関係などを確認します。競合の少なさや規模の経済といった一条件だけで選択や利益を確定できません。
価格を下げると必ず売上は増えますか?
必ずではありません。売上高は価格×数量なので、値下げを補うだけの数量増が必要です。たとえば10%値下げなら、売上を維持するには数量を約11.11%増やす必要があります。売上が増えても、費用を差し引いた利益が増えるとは限りません。
価格は、3つの視点を重ねて決める
図は確認する視点の例で、固定した手順ではありません。数量と総費用も見積もります。 各項目を押すと、本文の該当箇所へ戻れます。
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この単元、いま何問解けますか
登録なしで、その場で解けます。読んで分かったつもりでも、4択になると迷うのがこの単元です。
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第1問/全3問 本体を安く販売し、専用の消耗品で継続的に利益を上げる価格戦略はどれか。
キャプティブ・プライシングです。使用に必要な専用消耗品と本体の価格を組み合わせる点が根拠です。客寄せで他商品の購入を促すロスリーダーとは区別します。高級感を支える名声価格や、新製品を高価格から売り始めるスキミングとも目的が異なります。
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第2問/全3問 新製品を高価格から販売し、その後に価格を下げるスキミングを検討している。初期の高価格を支える根拠として最も直接的なものはどれか。
A。高価格を払う層の存在と差別化の維持は、高価格販売の直接的な根拠になります。Bの回収希望は売り手側の事情で、顧客の購入を保証しません。CやDも需要の確認がなく、ネットワーク効果や規模の経済だけでは導入価格を決められません。Aでも販売数量や費用を含めた採算確認は必要です。
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第3問/全3問 単一商品の月間価格を2,000円から1,800円へ変更すると、販売数量は300個から360個になった。1個当たり変動費は1,000円、月間固定費は180,000円で変わらない。税金・在庫変動・その他の収支を考慮せず、変更後の利益を計算するといくらか。
B。(1,800−1,000)×360−180,000=108,000円です。Aは売上高、Cは固定費を引く前の限界利益です。Dは変動費を旧数量300個のまま計算した値で、数量増を反映していません。変更前の利益120,000円に対して、売上は増えても利益は12,000円減っています。
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